心のとびらを開くワークショップ テーマ:「終活」
「人生の中からたった一つだけ思い出を天国に持っていけるとしたら、あなたは何を選びますか?」
今回は、少し趣向を変えて「自分の心のとびらを開く」ワークショップを開催しました。講師には、ヨガを通じて、「あらゆるものを結び繋ぐ」をライフワークにされている松本典子さんをお招きしました。
先ずは先生の合図で軽く目を閉じ、自分の身体の中心を探すようにゆらゆら揺れながらこころを鎮めていきました。
そして、いよいよワークショップの始まりです。穏やかになった頭の中で、天国に持っていく思い出を選びます。これは、是枝裕和監督が脚本、監督をされた『ワンダフルライフ(1999年)』をヒントにされています。
各々が選んだ思い出は「ワークシート」の質問項目に沿って活字として表現されていきます。スラスラとペンが動く方もいれば、うーんと悩む方も。皆さん、これまでの思い出と再会しておられるようでした。ワークシートの質問項目は、「何歳の頃の思い出? 季節は? 何処で? 誰と? 何をしている? そのとき流れていた音楽は? そしてその思い出を選んだ理由は?」と、こんな感じです。おそらく、皆さんを一番悩ませたのは「選んだ理由」だと思います。
何となく漠然と「もって行きたいなぁ~」と感じた思い出も、「選んだ理由」を深く考えることで、実はもっと深い部分でその思い出を自分自身が欲していたことに気づかされます。
お母さんの自転車の後ろに乗って何処までも付いて回っていた頃のこと。普段厳格な父親が見せた母への愛にあふれた仕草。いつも仲間と楽しく過ごしていた若かった頃のこと。親以外で自分を深く愛してくれた人と見ていた海。困難を乗り越えた後に目の前に現れた山の風景。そばで慈しみ深く接してくれた家族のこと。初めて知った挫折、何もかもがうまくいかないと感じた頃のこと。コンプレックスを抱えたこれまでの自分と決別した瞬間のこと。そして、これから起こるであろう輝かしい未来を思い出として天国にもって行きたいというお話もありました。
大事な思い出は、一つではない。だからこそ、ここで選んだ思い出には深い意味がある。そのことに気付かされたとき、皆さん、自然に顔がほころんだり、火照ったり、涙を流されたり・・・。感情が溢れ出ることを自然に任せておられるようでした。
こころの浄化。まさしく今回のワークショップは、日頃の凝り固まったこころを解きほぐすことが目的。そして、「人生の最期」について少し考える機会を持つこともねらいの一つでした。
単に、参加者の語る思い出に耳を傾けるだけではなく、感想を述べることで双方向に刺激しあうことができました。「大事な両親との思い出を持って行く気になれないのはなぜ?」「それは、まだ思い出にならないから。つまり、まだまだ元気な両親は日常のひとコマであって思い出ではないから。」
「大事な子供との思い出を持っていく気になれないのはなぜ?」「それは、その思い出が抱えきれないほど大き過ぎるから。」
あの瞬間には決して戻ることができないからこそ「思い出」なんですね。当たり前だけれど、何だか切なくなりました。そして、同時に、この瞬間がとても愛おしく思えました。
皆さん、抱えきれないほどの「思い出」をお持ちでしょ。ふっとした時に、この「思い出選び」をしてみてください。きっと、これからの生き方のヒントになると思います。
・・・人生の最期の瞬間、あなたは何を思い出として選びますか?